50代になると定年退職を意識する方が増えてくるのではないでしょうか。
退職すると多くの人が退職金をもらうことになると思います。
退職金ってそもそもどんな制度?
どんな受け取り方があるの?
どう受け取ったらお得なの?
など退職金の基本的なことについて解説いたします。
50代が知りたい「退職金」とは?
あなたが勤めている企業を退職する際に、支給される金銭を確実に支払うために定められた決まりを退職給付制度と言い、この金銭を退職金と言います。
勤続年数・役職・基本給等から退職金の支給額を計算するケースが多く、勤めている企業によって計算条件が異なるので注意しましょう。
退職給付制度は導入が義務ではないので必ずしも導入されているわけではなく、2018年の厚生労働省の調査では、80.5%の企業が導入しています。
(参考資料:平成30年就労条件総合調査 4.退職給付(一時金・年金)の支給実態)
企業規模によって導入率が異なっており、従業員数の多い企業ほど退職給付制度が導入されている傾向です。
50代が知っておきたい退職金の種類
退職金を給付する方法は主に4種類あります。
給付の方法は企業によって異なり、1種類の企業もあれば複数組み合わせて給付する企業もあります。
それぞれどのような特徴があるのかは次の通りです。
・退職一時金制度
対象者が退職する際に一括で退職金を支給する制度です。
就業規則などで定められた内容に基づいて、支給金額が決定されているケースが多く見受けられます。
退職時点の基本給に対し、勤続年数や退職理由などから支給率を掛け合わせて金額が決まったり、退職金算定用の賃金テーブルに支給率を掛け合わせて金額が決まったりなど、支給額の計算方法や支給時期は企業によって異なります。
まずは、就業規則などを確認してみることをおすすめします。
・退職金共済制度
企業が勤労者退職金共済機構と契約を結び、毎月掛金を納付することで従業員が退職した際に共済の仕組みを利用して退職金が支払われる制度です。
共済とは加入者たちが一定の金額を出し合って共同の財産を用意し、全体で補完し合う仕組みのことを言います。
退職した際、勤労者退職金共済機構から退職金が支払われるので、万が一勤めている企業が倒産した場合でも従業員は退職金を受け取ることができます。
・確定給付企業年金制度
企業があらかじめ就業規則で定めた退職金の給付額を掛金として毎月積み立て、外部機関に運用してもらうことで、退職金を準備している制度で、「DB」(Defined Benefit Planの略)とも呼ばれています。
この制度は前述の通り、従業員の退職金が将来いくら給付されるのかがわかっていることが特徴です。
ちなみに、外部機関に運用する方法は2通りで、信託会社や生命保険会社などに資産運用を委託する規約型と、厚生労働大臣の認可を得て企業が設立した企業年金基金が資産運用を行う基金型とあります。
・企業型確定拠出年金制度
企業が毎月掛金を積み立てるところは「確定給付企業年金制度(DB)」と同じですが、運用するのが従業員自身で行うことが大きな特徴です。
運用方法は従業員が決めることができるので自由度が高いと言えますが、一方で運用がうまくいかなかったときのリスクを従業員が負うことになり、運用の成果次第では給付金額が増減することが特徴の制度です。
この制度は年金の補完するものとしての意味合いが強く、運用した資金は原則60歳になるまで支給されることはありません。
「企業型DC」とも呼ばれています。
50代から知っておきたい退職金の受け取り方法とは?
退職金の受け取り方は、「一括」で受け取る方法と、「分割」して受け取る方法の2種類あります。
この受け取り方によって支払う税金が変わってきますが、税金については後ほどご説明しますのでご確認ください。
「一括」で受け取る方法はイメージがつきやすく、退職した際に定められた支給額を1回でまとめて受け取る方法で、一方、「分割」は支給額を何年かに分けて受け取る方法です。
「年金払い」という言い方をすることもあります。
50代が知りたい退職金にかかる税金とは?
退職金は通常の給与と同じように所得税、住民税がかかります。
前述の通り、退職金は2通りの受け取り方法があります。
この受け取り方法の違いによって税制上の扱いが変わり、控除の計算方法も変わってきますのでご確認ください。
・退職金を一括で受け取る場合
退職金を一括で受け取る場合、「退職所得」という扱いになり、退職所得控除が適用され、通常の所得税よりも税負担が少なく済むようになっています。
また、分離課税としても扱われるのですが、これは他の所得とは別で税金の計算がされるので、税負担が少なくなるようになっているのです。
勤務先で「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると所得税と住民税が源泉徴収されるので、従業員自身で確定申告をする必要はありません。
・退職金を分割で受け取る場合
退職金を分割で受け取る場合、「雑所得」という扱いになります。
雑所得とは公的年金や企業型確定拠出年金(企業型DC)も含まれ、これら年金を全て合算した上で、公的年金等控除が適用されます。
また、総合課税としても扱われるため、他の所得とまとめて税金の計算をする必要があります。
公的年金や退職金などの収入金額が400万円以下で、かつ他の所得金額が20万円以下の場合は源泉徴収されるので、従業員自身で確定申告をする必要はありません。
50代から考えたい、損しない受け取り方
退職金の受け取り方と税金の計算方法を2通り紹介しましたが、どちらで受け取った方がお得になるのでしょうか。
控除のみを考えると、一括で受け取る時に得られる退職所得控除の方が非課税分が大きいので、お得であると言えます。
しかし、必ずしもお得であるとは言い切れません。
これは、受け取る人によってどちらがお得になるのかが変わるということを覚えておいていただきたいです。
なぜなら、退職金の使い道や受け取る人のお金の使い方によってもどちらが良いかが変わるからです。
例えば退職後住宅ローンの返済や住宅のリフォームを行うなど、まとまったお金が必要であれば一時金の方がお得ですし、お金があると無駄遣いしてしまう可能性があったり、定期的に一定額を受け取る方が管理がしやすいと思う人には分割の方がお得であると言えます。
企業によっては一括と分割の両方で受け取ることができる場合もあるので、一度確認してみると良いでしょう。
そして、あなたの性格や生活にあわせて受け取り方を考えることが大切です。
まとめ
この記事では50代のあなたには間近に迫っている「退職金」についてまとめました。
意外と知らなかったことが多かったのではないでしょうか?
人生100年時代、退職してからの重要な資金源になる「退職金」について、少しでも考えていただけるようになったのであれば幸いです。
それでは、最後に今回の記事のまとめにいきましょう。
・退職金とはあなたが務めている企業を退職する際に支給されるお金です。
・退職金は4種類あり、企業によって異なるので就業規則等で確認しましょう。
・退職金は「一括」で受け取る方法と「分割(年金)」で受け取る方法があります。
・「一括」、「分割(年金)」どちらで受け取っても原則、確定申告は不要です。
・あなたが考える将来のお金の使い道で受け取る方法を選びましょう。